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登山道整備から広がるコミュニティ
2022.12.5
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登山道整備から広がるコミュニティ

北海道の真ん中に位置する「大雪山国立公園」。国内の国立公園で最大の面積を誇るこの場所は、カムイミンタラ(アイヌ語で『神々の遊ぶ庭』)とも呼ばれ、その名にふさわしい、圧巻の大自然が広がっています。麓の上川町には層雲峡温泉街もあり、希少な高山植物や、山々を彩る紅葉を一眼見ようと、多くの登山者や観光客が訪れる場所となっています。夏だけでなく、雪深い冬も、上質なパウダースノーを目当てに、スノーアクティビティを楽しもうと沢山のアウトドア愛好家が足を運びます。

進む登山道の荒廃

山を歩いていると、辺りを囲む壮大な景色に目を奪われてしまうものですが、多くの登山客が歩く「道」は、自然のままに保たれるわけではありません。人によるダメージだけでなく、その厳しい自然環境による侵食が起こり、登山道は日々荒廃していきます。

今回は、登山道整備の第一線で活動し、主に大雪山白雲岳〜高原沼温泉エリアの整備をされている、一般社団法人 大雪山 山守隊(以下 山守隊)の岡崎さんの活動を紹介させて頂きます。

白雲岳周辺での整備作業

取材に伺った現場は、6月下旬の豪雨による影響と思われる侵食が進んだ場所でした。
岡崎さん曰く、「水が流れることによって、すでに削れているところから、表土の下部が侵食され、結果的に植生の残っている表土も崩れ落ちてしまいます。すでに侵食が進んでいる箇所も含め、その場凌ぎの補修を施してもすぐには元通りにはなりません。極論を言ってしまうと、元に戻ることはほとんどありません。登山道整備とは、とても地道な作業になります。」
岡崎さんは、しっかりと自然を観察し、その場所の生態系を復元させる「近自然工法」という方法を使って、登山道整備をしています。

山守隊HP 山の道の直し方

「近自然工法」とは、現場を観察し、その場所がどのような環境であるかを想像し、侵食の原因を見極め、復元へのきっかけを作るためにどんな作用や資材が使えるのかを調査することから始まります。
今回の現場では、流水が原因で侵食が進んでいることから、水の通り道となっている最下段周辺にせき止めを作って土壌を溜めることが、修復への第一段階目だと考えて作業を進めることになりました。

ここで使用する資材(ヤシ土嚢袋)は、麓から背負って荷上げしたものです。中に入れる土や砂利は、現場周辺を観察し、採取しても生態系や地質に影響の少ないエリアから取って袋詰めしていきます。
「単純な作業ではありますが、とても奥が深いです。しっかりと自然を観察し、こんな風にやったら上手くいくのではないかとアタリをつけ、作業を行うのは楽しいことです。」と岡崎さんは語ります。

広がる活動

登山道整備は深刻なリソース不足に悩まされてきました。人もお金も協力も足りていません。ですが、岡崎さんの地道な活動により、登山道整備に関する認知が増えてきたことで、徐々に人員や補助金が集まるようになってきました。
今シーズンは、登山道維持管理協力金から人件費を捻出し、北海岳〜高原沼エリアの登山道整備人が配備されました。

「常時作業できる人員が増えることで、把握できる箇所が増え、補修が必要なところだけでなく、以前補修した箇所のフィードバックが多く得られ、収穫も多かったです。」と嬉しそうに岡崎さんは語ります。

登山道整備の作業予定日にはSNSを通して現場の告知を行い、その投稿を見た人や、通りかかった人がボランティアに参加してくれたり、道直しイベント「たまには山へ恩返し」を開催するなど、山守隊の活動が広がってきています。

今回、コロンビアとして、取材・撮影・作業体験を行ったのですが、実際に作業をしてみないとわからない現状がありました。そして何より、現状を観察して何をどのようにすれば問題が解決できるかを自然の中で考える「登山道整備」の作業自体が面白いことを体感しました。自然の楽しみを伝え、遊ぶことをビジネスとしているコロンビアとしても、上川町と協力しながら岡崎さんの活動をサポートしていきたい。と思いました。

北海道だけでなく、日本を飛び回り活動している岡崎さんの活動を是非見てみてください。
そしてよろしければ、来シーズンは一緒に「道直し」に行きませんか?
ご協力よろしくお願いいたします。

岡崎 哲三(おかざき てつぞう)

一般社団法人 大雪山 山守隊 代表 1975年生まれ 札幌市三角山出身。登山道整備や技術指導で一年中全国を歩き回り、山を治している。「合同会社 北海道山岳整備」「おかファーム」代表。近自然工法と武道を学ぶことがライフワーク。
HP https://www.yamamoritai.com/
Facebook https://www.facebook.com/yamamoritai

 

出村 契志(でむら けいし)

株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン マーケティング部 プロダクトマーケティング課 PR担当。
大学を卒業後、出版社でメンズファッション誌の企画営業を経て、2018年よりコロンビアに入社。
広告制作、プレス業務を担当しつつ、上川町との連携事業を務める。